【インサイト】米メジャーリーグサッカーにおける内転筋損傷:前向きコホート研究
- Ken Saito
- Jun 12
- 3 min read

以下は、Rebecca Davis、Alexander Poor、Charles Buz Swanik、Martha Hall、Benjamin Brewer、Jill Higginson による論文「Adductor Muscle Strains in Professional Soccer: Incidence, Mechanisms, and Risk Factors」の日本語による要約です:
プロサッカーにおいて、内転筋の損傷(アダクター・ストレイン)は、全筋肉系損傷の最大23%を占める重大な傷害負担となっており、選手の長期離脱を引き起こす可能性があります。復帰までは平均的に14〜22日かかりますが、重症例ではシーズンを棒に振ることもあります。
この種の傷害は、キック、方向転換、ジャンプ、リーチ動作など、伸張性筋収縮を伴う動作と関連しており、股関節の屈曲・内旋と膝関節の伸展が組み合わさった運動パターンがリスク要因とされています。特にミッドフィールダーは走行距離や運動強度が高く、他のポジションよりも内転筋損傷のリスクが高いと考えられています。
本研究の目的は、選手のポジション、年齢、過去の内転筋損傷歴などの特徴と内転筋損傷の発生率との関係を調査することでした。研究者たちは、(1) 内転筋損傷は一般的な傷害である、(2) ミッドフィールダーの損傷率が最も高い、(3) 主な傷害動作は方向転換、リーチ、キックである、という3つの仮説を検証しました。
7年間にわたるあるプロサッカーチームのデータ分析によると、選手の23%が非接触性の内転筋損傷を経験しており、これはハムストリングに次いで2番目に多い軟部組織損傷でした。仮説通り、ミッドフィールダーは他ポジションと比べて最も多くの損傷を記録しており、全体の中でも最大の割合を占めていました。
損傷の主なメカニズムは、オーバーユース(過使用)、方向転換、ランニングで、全体の約70%を占めていました。また、試合中の損傷発生率(26.5%)は練習中(10.5%)よりも高く、試合でのリスクが高いことを示しています。過去に内転筋損傷を経験した選手は、再発のリスクが顕著に高いことも判明し、既往歴が再損傷の強力な予測因子であるという先行研究の結果と一致しました。
本研究の限界としては、単一チームのデータであること、損傷の重症度や特定の筋肉の関与が詳細に分析されていないこと、契約前の傷害歴が除外されていることなどが挙げられます。ただし、同じ医療スタッフが全期間を通じて対応したため、データの一貫性は保たれています。
本研究は、選手のポジション、動作パターン、試合環境、既往歴が内転筋損傷のリスク要因となることを示しています。今後の研究では、選手のワークロード(運動負荷)やバイオメカニクスに注目し、リスク評価の精度を高めるとともに、予防戦略の最適化を目指すべきです。特に、股関節や鼠径部の筋力プロファイリングと長期的なモニタリングは、内転筋損傷リスクの軽減に有効であるとされています。
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